実録・妻の浮気

【妻の浮気】大好きだった先輩との一度だけの過ちを後悔!

フリージア

学生時代に好きだった先輩と再会後、一夜の過ちを

横断歩道

信号待ちをしている私の視界に飛び込んで来たのは、2年前に私が一度だけ過ちを犯してしまった男性でした。

横断歩道の上を何台もの車が連なるように通り過ぎて、その車両の間からでも、私はその男性が間違いなく彼だと気が付きました。向こうで信号待ちをしている彼とは、高校時代に私が好きだった先輩です。

夫のビールや息子が飲む牛乳、肉や野菜や食器用洗剤…。中身がぎっしり詰まった重いレジ袋の取っ手が、私の右の手のひらに食い込んで、額からの汗は止まりませんでした。

車両と車両の間からコマ送りのように見える彼もまた、白いワイシャツを腕まで捲くりあげて、焼けた手の甲で額の汗を拭っていました。2年前も、こうして先輩と再会してしまったのです。

2年前の再会で高鳴った気持ち

「あれ?久しぶり。オレだよ、覚えている?」

日々の育児や主婦業で、彼の存在はすっかり忘れていましたが、昔と変わらない子犬のような笑顔と顔に似合わない低い声は、私の心を一瞬で学生時代へ引き戻してくれました。

「重そうだね、持とうか?あ、これ、旦那さんのビール?結婚したんだね」

2年前に偶然会った先輩は、私の返事も待たずに右手からレジ袋を奪うと、私の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩いてくれました。

「俺、営業でこの辺りを担当しているんだ。ほとんど徒歩。でも、サッカー部だったから足には自信があるから大丈夫」

サッカー部だった先輩がグラウンドで練習する姿を、私はいつも遠くから眺めていました。

勇気を出して、たった一度だけ声を掛けたことを、先輩は覚えていたでしょうか?

校内どころか、他の学校にもファンが多かった先輩を、卒業式の当日に呼び出す勇気なんてありませんでした。

だから卒業式の前日に、先輩の自宅の近くを自転車で何度も往復して、偶然を装って声を掛けました。今だとストーカーって言われるかもしれません(笑)。

まだスマホじゃなくてガラケーしかなかった頃、私のガラケーで撮ってもらった写真は、しばらくの間、私の元気の源になりました。不自然な立ち方で、変に空いてしまった二人の隙間を後ろに咲く名前も知らない黄色い花が埋めてくれました。

2年前の過ちの経緯

「家、こっちだから、もう大丈夫です。重いのにありがとうございました」

先輩の手からレジ袋を受け取って、お礼を言った時、軽い感じで連絡先を聞かれました。学生時代にずっと聞けなかった連絡先を、先輩の方から聞いてくれたことが嬉しくて、私は一瞬だけ躊躇う素振りをした後、すぐに連絡先を教えました。

先輩の連絡先も教えてもらって、その日の夜は携帯の待受画面を黄色いフリージアに変えました。一緒に写真を撮ってもらった時の黄色い花の名前がフリージアだと知ったのは結婚してからのことです。

2年前に再会した日の夜、私はドキドキしていました。

家には夫も息子もいるし、連絡先を交換しただけで何の変化もありませんでしたが、「大好きだった先輩から連絡が来るかもしれない」と思うだけで、高校生の時の自分に教えてあげたい気持ちになって、胸がトキメキました。

それから数週間後、最初は喫茶店でした。

営業先との約束の時間まで一緒にお茶をしながら、同じ学校だった人の現在について、知っている情報を教え合いました。

二度目は居酒屋でした。

先輩が営業先から直帰になったと言うので、食事を兼ねてお酒を飲みました。夫には「友達から相談を持ちかけられたので行ってくる」と伝えました。

そして三度目。

この日は日曜でした。夫には再び嘘を言って夕方から出掛け、映画や食事を楽しみ、その後はホテルに向かいました。こうなることを、学生時代の私は望んでいたはずです。そして、この時も再び先輩の魅力に惹かれつつありました。

自宅に帰って私を我に返らせたのは、リビングに飾ってあった黄色いフリージアの花でした。

「おかえり。遅かったな。驚いただろ、この花。待受画面が黄色いフリージアになっていたから、好きなのかなぁって思って探したんだぞ」

夫は、私の外出を疑うどころか、私が居ない時間を利用して、私のために花屋を探し回ってくれました。この時の罪悪感や後悔は、一生消えないと思います。

その翌日、私は携帯電話を変えました。番号もメールアドレスも全て変えて、彼との関係を断ちました。

大好きだった先輩の横を素通り

フリージア

信号待ちをしている私の目の前にいる大好きだった先輩は、たった一度だけ過ちを犯してしまった相手でもあります。

先輩は私に気付いていません。信号が赤から青に変わって、横断歩道の前で待っていた人たちが一斉に歩き出しました。

私も中身がぎっしり詰まった重いレジ袋を持ったまま、うつむき加減で歩きました。

懐かしくいけれど、胸が苦しくなるほど痛んで、でも、ちょっとだけ顔を見たくなるような、そんな複雑な想いを秘めたまま、足早に先輩の真横を通り過ぎました。

あの時、夫が飾ってくれた花は、今でも私のスマホの待受画面になっています。

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